
以前、スタジオ助手をしていた時、撮影会のお手伝いも時々しました。撮影会を専門にやる業者がいて、うちのようなスタジオを1日借り切って、そこにタレントを呼んできて、素人カメラマンを集めて撮影会をやるのです。
その時の感想と、知人から聞いた最新情報をまじえ、1コーナー書いてみたいと思います。
<撮影会の種類>
撮影会には2種類あって、「ヌード撮影会」と「ノンヌード撮影会」があります。ヌードは、それ専門のタレントさんやAV女優さんがモデルになります。ヌードなので、屋外というわけにはいかず、全部スタジオ内で実施されます。写真スタジオは、短い時間を借りるよりも、丸一日借り切ったほうが、時間単価が安いので、1回1時間半くらいの撮影会を1日に3〜4回戦行ないます。4回戦というと、朝から晩までという感じで、モデルさんも大変です。ただ、モデルを呼ぶのも、丸1日のほうが割安なので、とにかく1日にいっぺんにやってしまいます。
ノンヌード撮影会は、グラビアタレントとか、全然無名のタレントの卵とか、レースクイーンとか、いろいろです。私のときはレースクイーンが多かったような記憶があります。(といっても、レースなんて見ないので、知らない人ばかりでしたが)
この場合、「公園ロケ」というのを組み合わすことが多いです。4部のうち、午前中の1部もしくは1〜2部を屋外で撮影するのです。スタジオ撮影だけでは飽き足らない人もいるわけで、公園ロケも好評のようでした。この場合、午前の公園ロケと午後のスタジオ撮影の両方に参加する人もいて、そういう、「1日に何部も参加してくれる客をあてこんで」、屋外とスタジオを組み合わせているそうです。(屋外には我々スタジオスタッフは行きませんので、内容はよく知りません。ただし、悪天候の場合はスタジオ撮影に急遽変更になるので、準備はしておきます。)
<広告媒体>
今は、インターネットが有力な媒体だそうです。昔はインターネットがなかったので、カメラ専門誌などに広告を載せていました。ヌード撮影会は、エロ本に載ることが多かったようです。また、アイドルについては、その手の専門誌にも載せたようです。
<どんなモデル>
まず、人数ですが、普通2〜3人です。2人が一番多かったかなあ。スタジオでは、セットを2箇所組みます。バックも2種類、色を変えて用意します。そこに2人がそれぞれ立ちます。場所を交互に変えながら撮影します。3人の場合は、一人は休憩できます。
正直、一流の人はなかなか来ません。一般のカメラマン相手の撮影会ですから、2〜3流のモデルさんです。ヌードの場合、AV女優さんのほうが人気があるようで、チラシなどには「AV女優!」などと大きく書いてありますが、AVといってもピンキリですから、1本しか出ていない人もいたりします。それでも、肩書きはAV女優です。なかには、AV女優といいながら、仕事の中心は撮影会ばかりになっている人もいて、「また、この人が来た」なんていう常連さんもいます。まれに、大物のAV女優も撮影会に参加することがあり、普通7〜8000円の参加費が、そういう時だけ1万数千円に跳ね上がったりします。(ストリップ劇場でも、大物特別料金ってありますよね)
ノンヌードも無名な人が多いです。レースクイーンなどは、ある程度の実績がある人がくるようで、ポーズも慣れています。タレントさんの場合は、新人時代の仕事としてやっているようです。たまに、けっこう活躍している人が来ると、やはり特別料金になったり、ふだんは予約不要なのに、要予約になったりします。ちょっと危ないなあ、と思うのは「ロリ系」の撮影会。高校生くらいの、私からすると”まだ子供”がモデルやっています。ロリ系の場合、幼い顔立ちのほうが人気があるようなので、実際は高校生でも、見た目は小学生みたいなアンバランスな子がきたりして、それを宮崎勤みたいな男たちが必死に撮っている姿を見ると、「これはヤバイんじゃないの?」と呆れながら見ています。今は、本物の小学生モデルを使った撮影会もあるそうで、ますます恐ろしい世界です。
タレントさんの場合、宣伝もかねていることが多く、撮影会の場で、写真集やビデオの即売会をしたりもします。そういうのを買うと、「ツーショット写真撮影プレゼント」なんていうのがあったりします。
<お客さんの人数 参加費>
スタジオの広さからすると、1セットで10人がマックスでしょうか? 普通、5人ずつ2列になって撮影します。前列は座ったりしゃがんだりして低い姿勢になり、後列は立った状態で撮ります。時間を見計らって、主催者が、「じゃ、、前後を交代しましょうか?」などと仕切って、交代させます。ひとつのスタジオで2セット組みますから、合計参加者は20人。これ以上はきついです。ただし、主催者側からすると、いくらでも来て欲しいと思っていますので、「予約不要」「定員なし」「どうぞ自由に来て下さい」というのが多かったです。人気のあるモデルの場合、3〜40人来ちゃったことがあり、芋を洗うような撮影会になります。「こんな混んでいるんだったら、次の部にするよ。これ以上多いことはないだろう」といって、2時間待った客が次の部に来たら、もっと増えていた、という悲惨なこともあります。超人気モデルの場合は、事前予約制にすることが多いです。ただ、定員20名といいながらも、「あれ?20人以上いるじゃん?」ということもあります。主催者はもうけたいから、「これくらいならいいだろう? 当日キャンセルする人もいるし」と、詰め込むんです。
ノンヌードの場合、参加費は5〜6千円が普通ですから、4部で全回20人来てくれれば、1日で48万円の売り上げになります。ヌードの場合は、単価が高い(8〜9000円)のでもっと売り上げは増えます。ただ、当然ギャラも高いですけどね。
ただ、無名なモデルの場合、「客は4人だけ。ほとんどマンツーマンの貸切撮影会」みたいなこともあるわけで、主催者は苦い顔、参加者は満面の笑みだったりします。
撮影会を専門にやっている業者の場合、会員制度をとっていることが多いです。変な客が来ると困るので、会員証発行時に住所氏名を控えておくという目的もあります。会員になると、「5回参加で次回無料」なんていうスタンプサービスがあります。また、人気アイドルの撮影会の場合、朝から晩まで全4部に参加する、ありがたい熱心なお客さんも多く、こういう人のために、「全4部に参加する場合、3000円引き」なんていう割引サービスをやったりします。
受付の様子を見ていて思うのは、「業者によって、領収書を出すところと出さないところがある」ということです。おそらく、領収書を出さない業者は脱税していると思います。お金の扱いも粗雑で、自分の財布から出し入れしたりしています。
熱心な客というのは、遠方からも来るわけで、交通費と撮影会参加費、そして即売会でビデオ買ったりするお金を全部合計すると、1日で6万円くらい使う計算になるファンもいます。ファンは偉大だなあ。2流のアイドルでも、けっこういい商売になります。
<スケジュール構成>
だいたい、1部当たり、1時間半程度の枠です。受付が10分前から始まります。前の撮影が行われている時は、早めに行ってもスタジオ内に入れてもらえず、参加者は外で待っています。うちのスタジオは商売上手で、隣の喫茶店とタイアップしていて、「時間が来るまでこちらでお待ち下さい」と案内してました。
10分前から受付開始しても、けっこう受付には時間がかかるし、この業界特有の「時間にルーズ」というのがあって、撮影開始はたいてい遅れます。ですから、本当は25分の撮影枠なのに、20分に短縮になったりします。
流れはこんな感じです。
@前半撮影 約25分
Aサイン会 約20分
=その後休憩 20分 モデルさんは着替え=
B後半撮影 約25分
前半と後半で衣装を変え、セットも交代します。ヌード撮影会の場合、ヌードといっても、いきなりヌードということはなく、最初は服を着ていて、徐々に脱ぎながらヌードになっていきます。ある種、ストリップを見ているようなものなので、若輩者の私なんかは、仕事をしながら、股間にテントをはってしまうこともよくありました。実際、お客さんの中には、休憩中にトイレで一発コイテいる人もいました。(だから、あとのトイレ掃除は大変)
ヌードの場合は、裸ですから、「衣装を替える」ということがなく、どの部の撮影も内容はほとんど同じです。ですから、アイドルの時みたいに、全4部に参加する人は稀です。4部とも衣装の組み合わせはいっしょ、ということが多いです。(中には、「衣装も見て」と全部替えるモデルさんもいますが) ノンヌードの場合は、全4部に参加する人も多く、モデル側も部ごとに全部衣装を替え、同じものは着ません。ヌードと違い、衣装がメインですから当然でしょう。水着アイドルの場合、1・3部はワンピースで2・4部はビキニという構成にしていることがあります。これは、「え、ワンピースなの? つまんないよ」「次の部はビキニですよ」「あ、そう、それじゃ、ビキニをぜひ見たいから、もう1部延長して、次の部にも参加するよ」という客をあてこんでの作戦のようです。
また、ノンヌードでは、「前半は普通の服 後半は水着」というパターンも多いです。この場合、要領のいいモデルさんは、最初から下着として水着を着込んでいて、その上に洋服を着ています。後半は上の服を脱ぐだけなので楽なんです。スケベな私としては、「両方とも水着のほうが、撮影する側はうれしいよな」と思っていますが。
撮影の時間というのは、けっこうきっちりしています。(とはいえ、「すいません! あと1枚だけ」と言いながら、何十枚も撮る。ずうずうしい人もいて、1分くらいは、ずれこみます。厳しい主催者の場合は、「はい、おしまい」と言って、有無を言わせずにガウンを着せてしまいます)
時間が読みにくいのがサイン会です。わりと人気のあるタレントだと、長い時間がかかるのです。人気タレントの撮影会というのはコアなファンが多く、粘着系です。そして、追っかけみたいに各地の撮影会やイベントについていくため、タレントと顔なじみのことが多く、タレント側もうれしくて、ついしゃべりが長くなります。「サインは1枚だけですよ。後ろの人が待っていますから、早めにお願いします!」と主催者が声をかけても無視して、しゃべまくります。中には、「これさ、先月の撮影会の時の写真です。どう? きれいに写ってるでしょう・・・・・」と話を始めてしまうファンもいます。サインも1枚だけでなく、そのタレントの写真集やらビデオ(今はDVD)を持ってきて、「これ全部にサインして下さい」と言います。タレントも悪い気はしないので、全部にサインをしてあげて、かつ、ただのサインだけではなく、「今日はきてくれてありがとう。○○さん・・・・」と、長い文を書いてあげることが多いです。このため、ますます時間がかかります。うしろで順番を待っている客は、すごく怒っています。主催者は「早くしてください。でないと、後半の撮影時間が少なくなりますよ!」と注意しますが、しかとされます。こうやって、サイン会の時間が大幅オーバーしたために、後半の撮影時間が短くなり、客同士で「おまえが、何枚もサインさせるから、短くなったんだ」とケンカが起きることもあります。「サインは1枚 一人1分でお願いします」と言ったら、それを守って欲しいです。優しい主催者の場合、「撮影時間が短くなるのは悪いから」と時間をうしろにずれこませる場合がありますが、これはこれで、次の部の開始の時間が遅くなるわけで、困りものです。
<人気の差>
複数のモデルが参加する場合、そのモデルさんの人気のレベルが如実に現われます。というか、人気モデルを二人そろえるのはギャラの関係で難しく、たいていの場合は、「一人は人気者、もう一人は無名」という組み合わせが多いです。これは、「一人より二人のほうが客が喜ぶだろう」とか、「人気モデルに集中されるのを防ぐ、分散目的」だったりして、まあ、あて馬といったほうが早いかもしれません。無名の子の場合、どうみても、「ただの普通の女の子だろう。タレントとはいえないだろう」というのもいて、「そんなレベルの子でも、抱き合わせでやるのなら仕事になるのかな?」と思います。ファミコンソフトみたいです。この業界もいろいろ大変です。
「人数だけ多ければいい」という考えなのか、無名の子を4人そろえる場合もあります。いろいろな子を撮影できる楽しさはあるでしょうが、いかんせん、素人レベルの子ばかりで、私には、そんなのに参加するカメラマンが何が楽しいのかわかりません。(素人ッポイのが好きという人もいるからなあ)
さて、人気の差があるということは、撮影する側の人数の差になって現われます。Aセットの人気者は30人のカメラマンが「おいどけ。撮れないよ」「おい、前の奴はしゃがめよ」「おい、前に出るなよ」とおしあいへしあいしています。一方、Bセットの無名タレントの前には2〜3人のカメラマンしかいません。特に、人気タレントが巨乳の場合、参加者はほとんどがオッパイ星人ですから、ペチャパイの無名タレントなんて眼中にありません。面白いのは、無名タレントのほうで、カメラマンが一人だけになったりすると、「僕がいなくなると、誰もいなくなるから、この子が悲しむだろうなあ」と思ってか、なかなか、その場を動けなくなるのです。「誰か来てくれないかなあ?」 と思いつつも、誰も来てくれません。「この子ばかりにフィルム使うのはもったいないんだけど、シャッター切らないわけにはいかないし・・・・」と悩んでいる様子が、はたからもわかります。こういう人は、フィルム1本使い切った時がチャンスで、「あ、ごめん、フィルム交換してくるね」といって、本当はポケットの中に予備フィルムがあるのに、ないようなふりをして、カメラバッグを取りに行くようにセットを離れていきます。
こうやって、最悪の場合、「無名タレントのほうは誰も撮影していない」、という事態になることがあります。しかし、うまいもので、イモ洗い撮影に疲れたカメラマンが、「ちょっとは、こっちのセットで楽に撮ろう」と思って、移って来る人がいます。こうやって、なんとか、2〜3人は無名のほうにもいるわけです。
サイン会ではもっと顕著になります。タレントが二人、机にならんで座るのですが、片方には20人の行列、もう片方には2人だけ、なんてことがよくあります。2人だけのほうは早々と切り上げて休憩してしまいます。芸能界は厳しいなあ。
と
<照明>
5500Kのデイライト照明を用意します。ただ、昔は照明機材が暗かったので、スタジオの地明かりだけでは暗いということで、ストロボを炊きながら撮る人も多かったです。特に、安い望遠ズームを使っている人は、レンズのF値が暗いので、ストロボは必須です。しかし、ストロボで撮ると平板に写りますから、本当は明るいレンズを使って、スタジオ照明で撮影したほうが光はきれいです。お客さんがずらりと並ぶと、いろいろな角度からの撮影になるため、普通のプロカメラマンによる、「真正面から見た時だけ最高の照明にする」というのではなく、どこから見ても明るく、影の出にくい照明を作ります。(プロからするとつまらない照明かもしれません)
ストロボの光というのは、モデルさんからするとけっこう強烈で、目の弱い子はモデルは無理です。主催者(&タレントマネージャ)は、「ストロボはあまり使わないで下さいね」「あまり近くから撮らないでね」とお願いしてまわります。それでも、昔はみんなフィルムカメラだったので、連写でバシャバシャ撮る人は少なく、けっこうじっくりと構図を決めて、1枚1枚シャッターを切る人が多かったです。
今は、ほとんどデジタルのため、フィルム代を気にせず、ひたすら連射をして、1時間で2千枚くらい撮影する猛者もいるそうで、そんな人がストロボ使ったら、モデルさんの目が持たないので、地明かりを明るくして、なるべくストロボは使わせないようにしているそうです。照明機材も明るくなったので可能なんでしょう。
ただし、きちんとした写真スタジオではない、例えば、そのタレントが所属する芸能事務所の会議室を、一時的に仮設スタジオにして使用するような場合は、照明が暗かったり、照明にムラがあったり、背景が小さすぎて撮影しにくかったりすることもあります。仮設スタジオはスタジオ使用料が不要のため、儲けの大きい方式ですが、お客さんからすると不評です。(コンテストに出展するような作品は撮れません)
<衣装 メイク 背景>
大物タレントの場合、メイクさんもいっしょに来る事がありますが、撮影会モデルのクラスだと、来ないほうが多いようです。自分でメイクして、衣装も自前で持ってきたりします。
写真スタジオというのは、背景もいろいろな種類があって、主催者の要求に応える事が可能です。たいていは無地で、白バックや青バック、ピンクバック、茶バックなどを使いますが、いろいろです。椅子などの小物も用意しています。モデルとしては、なんか掴るところがあるほうがいい、という子もいます。ただ、物があると影の出方を気にする人は嫌がることもあります。セットを2つ組む時は色を変えます。
ちゃんとした主催者は、「今度の撮影会は何色の背景だからね」とタレント事務所にあらかじめ伝えておくのですが、いい加減な主催者やいい加減なタレント事務所だと、そういうことを理解していなくて、白背景なのに、白い洋服着せたりして、「全部真っ白でなんだかわかんないよ」とカメラマンから苦情が出ます。写真には白い服は向いていません。カメラマンも露出をとりにくくて、腕の差が出ます。ど素人の撮影会では、白い服はやめたほうがいいです。背景も真っ白はよくないです。せめてアイボリーくらいにしないと。鮮烈な赤い水着なのに、赤系統の背景だったりすると、これも台無しです。このように、背景と衣装の色のバランスはあらかじめ主催者が決めておいたほうがいいと私は思います。
ノンヌード撮影会のタレントといえど、「乳首だけ隠してあとは全開」みたいなエロエロタレントさんがいます。そういう人って、エロ本のグラビアなんかでは、すごいきわどい衣装で撮影しているんですが、なぜか、撮影会では普通の洋服のことが多く、私なんかがっかりです。水着にしても、がっちり、バスト全体を覆う水着を着たりして、「ハミパイ」とか期待している人は、期待を裏切られていると思います。なんでなんでしょうね。みんな高いお金払って遠方から交通費かけてきてる人もいるんだから、タレント側もサービスすればいいのに、って思うんですけど。ポロっと出たりするのをすかさず撮られたりするのを心配してなのかなあ。でも、水着の時って、みんなニプレスしてますから、実際は、ポロリしても大丈夫なんですけど。
<場所取り&目線>
カメラマンが大勢いる撮影会の場合、いい撮影ポジションを確保するのが大変で、沈黙の中で熾烈な戦いが行なわれています。こういう撮影会に慣れているカメラマンは、あまり非常識なことはしませんし、前で数分撮ったあと、「じゃ、どうぞ」といって、場所を譲ります。マナーを心得ているのです。慣れていない・図々しいカメラマンの場合、一番いい場所にずっと陣取ったりして顰蹙を買います。なんか今は、携帯で撮影する人もいるらしく、こういう人は電話だけを前方ににょっきり差し出して撮影し、周囲から、「ふざけるんじゃねえ。じゃまだ!」とか怒られるそうです。控えめな人は、後方から望遠レンズで撮ったりします。まあ、顔のアップとか上半身だけの場合なら、それでもいいですが、全身は撮れません。撮影会では、ある程度図々しくないと、いい写真は撮れません。顰蹙を買わないギリギリの図々しさが一番です。全員が撮影会慣れしているカメラマンの場合、実に整然と、前後が交代する時もあります。長篠の戦いの火縄銃みたいです。
いい場所をとっても、モデルが自分の方を向かないと意味がありません。そう、目線取り合戦です。これも図々しいカメラマンは「○○ちゃん! こっち向いて!」と巧みに声をかけ、自分のほうを向かせようとします。こうやって、20秒くらい目線を独占します。この間、別のカメラマンは「次は俺だ」と思って待っています。「○○ちゃん、どうもありがとう」と前のカメラマンが言って、モデルが解放された瞬間、あちこちから、「次はこっち!」という声がかかります。この時にうまく声をかけられないと、なかなか自分の方も向いてもらえません。アイドルモデルの場合、視線が向いていない写真には価値がないらしく、みんな必死になって目線をもらおうと努力します。
モデルが慣れている場合、「じゃ、こっちからそっちへ順番に行きますから」と、自分が仕切って、目線を送る子もいます。これだと、どんなに控えめなカメラマンでも、最低1回は、自分のほうを向いてもらえます。
カメラの高さですが、モデルの胸の辺りの高さが一番いい写真を撮れます。ただし、ヌード撮影会とか巨乳アイドルの撮影会などでは、「下からのほうがエロイ写真を撮れるから」と、ローアングルにこだわるカメラマンもいます。
<お客さん>
撮影会に来るお客さん(=アマチュアカメラマン)というのは、いろいろな人がいますが、ひとくくりにすれば、今流行の「アキバ系」といった外見です。正直、不細工でむさくるしい男が多いです。
客層は「ヌード」と「ノンヌード」で大きく異なります。
ヌードの場合、年配者が多くなります。30〜60才というところでしょうか? カメラ機材も高級品が多くなります。「プロよりも、いいもの持ってるんじゃないの?」という高級機材が揃います。でも、あまり大きなレンズを振り回されると他の人の迷惑なので、本当は普通の安いレンズのほうがいいと思います。ヌードの場合、来る人はみんなスケベなんですが、「ただのどスケベ」という人もいます。写真を撮るというよりも、ストリップを見に来ているような感じです。「オッパイをギュっと揉んで」とか、「もっと股を開いて」とか、言いたいことを言って、モデルや主催者から睨まれたりします。床に這いつくばって、超ローアングルで、陰部を撮ろうとしたりします。でも、他の客は、その言動を黙っている振りをしながらも、「よくぞ言ってくれた」と喜んでいる顔をしていて、そういう様子を傍から見ているのは面白いです。カメラマンというのは、基本的にみんなスケベで、モデルもそういうことをわかっているんですが、カメラマン本人は「いや、俺はスケベじゃない。芸術作品を撮りに来たんだ」と思い込んでカモフラージュしている人がけっこういます。こういう人は、本当は言いたいのに、わざと聖人君子のふりをして、スケベなことは言いません。無理してます。
アイドル系だと、カメラマンも20代が多くなります。彼らも、基本はスケベなのに、「スケベだとバレルと、彼女(モデル)に嫌われてしまう」とか、勘違いして、無理して、いい人ぶっていて、これも面白いです。「もしよろしかったら、両手を上に上げるポーズをとっていただけないでしょうか?」などと、やたら丁寧な言葉遣いをしたりします。しかし、「こういう奴ほど、ネット掲示板でひどいことを書くんじゃないか?」 と言われています。若い人だと、カメラ機材も安価になります。その中に高級機材を持ったカメラマンが混ざると、けっこう優越感に浸れるそうです。アイドルのファンの中には実は、40〜50代の、いい年したオッサンがたまにいます。こういう人はすごい機材も持っていますし、お金持ち&暇なんでしょう、そのアイドルのすべての撮影会に参加しているようです。というわけで、ファンの中でも重鎮として尊敬されていて、周囲の普通のファンがひれ伏しているような撮影会もあります。ポーズづけもそのオッサン一人で口を出し、まわりはだまってそれに従います。休憩時間は、そのオッサンの講演会みたいになっています。私からすると、「他のカメラマンの迷惑」「いい年して、何、若者相手にえばってるの?」と顰蹙物なんですが、本人は御満悦です。撮影会のあとも、仲間を連れて飲みにいったりするそうです。「あの人に付いて行くと、ただで酒が飲める」と、くっついていく人も多いようです。
撮影の時は紳士面していてもサイン会の時だけ、ものすごい図々しい奴にかわる人もいます。撮影はダシで、真の目的はアイドルと1対1で話せることなのかもしれません。
まあ、とにかく、撮影会というのはいろいろな人間観察ができて面白かったです。
<デジタル化の波>
今は、デジタルカメラ全盛で、フィルム代や現像代がかからないようになって、経済的負担が減ったため、撮影会に参加する人が増えており、必然的に撮影会ビジネスもけっこう隆盛だそうです。デジカメだと、プリントしなくても、PCのモニター上で画面を見られるし、撮影会のように、枚数を多量に撮る撮影の場合、コストが全然安くなりました。その分、参加回数が増やせるようになったのでしょう。芸能プロダクション側も、儲かるイベントと考えているようです。
ただ、問題になってきたのは、ネットの普及で、撮影した画像を発表する機会が増えたこと。カメラマンの中には、悪質なコラージュを作ってアップする人もいるそうです。撮影会の途中で、たまたまポロリしてしまったニプレス画像を「お宝」として売る奴もいるそうです。
それに、「撮影会の画像をネット上に公開すると、写真集が売れなくなる」ということで、肖像権をかざして、「一切他に発表してはいけない」と念を押して、誓約書をかかせる主催者もいるそうです。まあ、今は、権利関係がいろいろうるさいですから仕方ないのかもしれませんが、「年齢詐称」「サイズ詐称」「整形豊胸」と、やりたい放題の詐欺をやっている芸能界が、法律遵守を言うのも、ちゃんちゃらおかしい気がします。熱心なファンが、そのアイドルを応援するために作った私設HPに撮影会の写真を載せたって、別にいいんじゃないでしょうか?
私はそう思いますけどね。
|