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学校でのイジメ問題を写真撮影の側面からちょっと考えます




 最近、学校におけるイジメが社会問題となって語られています。もちろん、私自身も経験があることです。学校時代だけでなく、社会人になってからもあります。ある意味、人間社会における永遠の宿命かもしれません。

 学校のイジメに特化して述べます。実は、私、スタジオアシスタントをしていた際、時々、学校写真の業者さんに頼まれて、「遠足・社会科見学などの同伴撮影」というアルバイトをしておりました。学校から同行して、バスや電車に乗って目的地へ行き、集合写真を1〜2箇所撮影し、その他、スナップを随時撮影するという仕事です。集合写真では中判カメラを操作しますので、我々のような日ごろから中大判カメラをいじっているものにとっては、やりやすい仕事でした。

 こういった学校写真の撮影では、「参加者全員をまんべんなく撮る。一部の子供だけがたくさん写っていることのないようにする」という<平等性>が強く求められます。ムラがあると、あとで保護者から、「うちの子は1枚しか写っていないのに、よその子は20枚も写っている。差別だ!」といった苦情が来るからだそうです。しかし、子供の中には「目立ちたがり屋でどんな場面でもしゃしゃり出てくる子供」もいれば、「シャイで、カメラを向けるとすぐに横を向いてしまう、隠れてしまう子供」もいて、平等に撮影することはとても難しいです。そこで、「この場面なら確実に全員の顔を撮れる」というシーンがあります。それは、「昼食風景」。食べながら走る回る子はいませんから、じっとしています。これなら、全員写せます。このため、会社からは「昼食風景の時は必死になって撮れ」と命令されています。ですから、自分の昼食はあとまわしにして、子供たちの様子を撮りまくります。今みたいに子供が少ない時代ではなかったため、学校によっては1学年で4〜5クラスあるところもありました。人数としては、130〜200人くらいになります。これだけいると、全員を撮るのは至難の技です。子供の中には「早く食事を終わらせて遊びたい」という子もいて、そういう子供は10分くらいで食事を終えてしまいます。ですから、こちらも必死になって素早く撮り終えなくてはなりません。スナップ写真といえども、高度な技術が必要なのです。

 遠足での昼食は、たいていがどこか広場でビニールシートを敷いてのお弁当です。ここでのグループ分けが非常に大きな問題です。「班ごとに固まって座りなさい」と指導してくれる先生だと助かるのですが、「先生! 好きな人たちだけで食べていい?」「うん、いいよ」なんていう先生の場合、困ります。というのは、好きな者同士で固まると、必ず、「仲間はずれ」の子供が発生するからです。誰からも「いっしょに食べよう」と誘われずに、広場の片隅でポツンと一人だけでさびしい表情で食べている子が必ずいます。本来、お弁当のシーンは「数人の子供たちがまとまってわいわい楽しそうに、お母さんが作ったおいしいお弁当を食べている、ほほえましい姿」を撮影するものですが、この子の場合、「仲間はずれの証拠写真」となってしまいます。しかし、「全員をまんべんなく撮れ」と命令されているカメラマンは、そのさびしい姿を撮らなくてはいけません。つらい仕事です。このように、お弁当のシーンは、そのクラスの中の勢力分布というか、仲間分けが如実に現れてしまう場面なのです。
 また、「班ごとにまとまってお弁当を食べている」としても、いざ撮影する段階になると、「○○といっしょは嫌だから、この3人だけで撮って」などとわがままを言う子供もいます。(特に女子) せっかくまとまっているのに、その班の中で再分類が行われるのです。ここでも、一人だけ仲間はずれにされる子供が出現します。

 その他、周囲は母親の手作りのお弁当なのに、(両親の離婚など、家庭の事情で)コンビニ弁当を持ってきた子供が、「恥ずかしいから撮らないで下さい」と拒否することもあります。でも、全員撮らないと会社から怒られるので、「わかった、お弁当自体は写さないから、エビフライを咥えている顔のアップを撮らせてよ」などと、工夫して撮影します。

 このように、社会の縮図が現れる「お弁当シーン」、カメラマンも苦労しています。



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