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風俗嬢写真の実態


 
 昔のスタジオ仲間と連絡をとりました。彼は今、某スタジオでメインカメラマンをしています。「何撮ってるの?」と聞くと、「いろいろだけど、主は風俗のお姉さん」とのこと。「面白いから、今度こっちに来ることあったら遊びにおいでよ」と招待を受けました。そんなわけで、田舎から出て、先日、彼のスタジオ(といっても、雇われカメラマンなんだけど)に遊びに行ってきました。

 このスタジオは繁華街のはずれの雑居ビルの上の階にあります。普通の街の写真館をちょっとおしゃれにしたような作りになっています。「成人式写真撮ります」「七五三写真撮ります」「ペットといっしょに家族写真撮りませんか?」「就職用写真撮ります。修整つきです」「きれいなお見合い写真」といったポップ広告を出しており、普通っぽいです。
 しかし、このスタジオの経営者の意図は、「今、需要が増えているオミズ関係の写真を重点的に撮って儲ける」というところにあるそうです。このため、水商売の店の多い場所をロケーションとしました。

 表面的には「なんでも撮影します」とのことで、普通の写真館なんですが、売り上げの7割以上はオミズ関係らしいです。私が見学にいった時も、ちょうど「新人ヘ○ス嬢」がプロフィール写真の撮影に来ていました。
 私も、もともとスタジオマンなので、友人カメラマンの手伝いをしつつ、撮影の様子を見させてもらいました。このスタジオ、一般の写真館と違うのは、「メイクルーム」が立派なこと。けっこう広いですし、立派な三面鏡が設置されています。

 さて、撮影に来たお嬢さん、おどおどしながら、「Zヘブン(お店の名前)のA子です。店長に、ここに行けって言われたんですけど」と入ってきました。この風俗店は新人が入店すると、このスタジオに行かせて写真を撮ることになっているようです。でも、お店のボーイさんがつきそうわけでもなく、一人で行かされたので不安な顔をしています。とはいえ、撮影する側は慣れているので応対がテキパキしています。「あ、A子さんね。予約入ってますよ。え〜と、水着3カット、ヌード3カット、店用は顔出し、HP用は顔ぼかしね。それじゃ、向こうの部屋で着替えてくれますか?」「あ、はい、わかりました」
 そして、彼女はメイクルームに入りました。顔の化粧は事前に作ってきてあるので、着替えるだけです。水着になって出てきて撮影開始です。彼女はこういうふうに撮影されるのは初めてらしく、恥ずかしそうにモジモジしています。ポーズもぎこちないです。カメラマンもそういうことに慣れているらしく、口から出てくる言葉が巧みで、褒めちぎって、彼女の緊張を和らげて、雰囲気を盛り上げていきます。彼女、正直いってかなりブスです。そしてデブです。これを褒めるのは難しいです。しかし、彼いわく「単価の安い撮影だからね。そんなに時間をかけてられないんだよ。早く撮れるように、うそでもなんでも言うよ。」とのこと。

 このスタジオ、撮影はすべてデジタルになっています。カメラとテレビモニターが接続されており、モデルさんはその場で写真をすぐに確認できます。何枚か撮りながら、「どれがいいですか?」と決めてもらいます。といっても、風俗嬢の撮影の場合、「モデル本人が喜ぶこと」だけでなく、「その写真を見るお客(つまり、スケベ男)がどう思うか」がポイントになります。このため、カメラマン(男)が、「お客さんはこういうのがいいだろうなあ」とアドバイスして、写真を決定していきます。

 水着のあとはヌードです。これも最初はモジモジしていたんですが、カメラマンの言葉がうまく、いつのまにか脱がせていました。私は、「コイツ、こんなにしゃべりうまかったかなあ。ずいぶん変わったなあ」と感心しました。私なんかがヌードを撮ると、すぐにいやらしい目になるんですが、彼は「当たり前」という顔で、全然そんなことはありません。その点も女の子の安心感を高めるようです。とはいえ、この女の子は貧乳だったため、私も全然興奮しませんでした。さて、裸になってちょっと問題が発生しました。下着の線のあとがはっきり皮膚に残っていたのです。「ヌードを撮る時は、撮影前数時間は下着を着けないようにして下さい」と事前にお願いしておくそうですが、彼女は聞いてなかったようです。昔なら、「困ったなあ。ちょと待つか?」などと、跡が消えるのを待ったりしたのですが、デジタルは違います。「まあ、いいよ。あとでフォトショップで消すから。とにかく撮ろう」と撮影再開です。貧乳を隠すため、両腕で胸を手繰り寄せ、無理やり谷間を作ります。デブを隠すには腕を腰にあててウエストを見えないようにします。また、四つんばいポーズだと、腰は見えにくいし、胸は引力で垂れて大きく見えます。カメラマンの頭の引き出しには、「細く見せるため」「胸を大きく見せるため」「美人に見せるため」・・・・といったツールが豊富に入っているようで、撮影した写真はすべて別人のようです。「ポーズや照明、そしてメイクで美しく撮る」ということは昔からあったので驚きませんが、私が驚いたのは其の後のデジタル処理です。

 昔なら撮影したらそれで終わりで、「数日後に写真をお渡しします」と言って、いったん引き取ってもらうのですが、今は違います。「30分くらいで出来上がりますから、ロビーでコーヒーでも飲んで待っていてくれますか?」と声をかけます。ロビーには風俗雑誌も何冊かおいてある為、風俗嬢さんが参考資料として見ています。(ただし、七五三の撮影などが入っている時は、撤去するそうです。そりゃそうだ、子供には見せられない)
 ご本人とカメラマンの意見を総合して決めたベストショットをPCに移します。スタジオの裏側にあるPCルームで「修整」作業が始まります。普通はこの作業はお客には見せないそうですが、常連の女の子だと、修整の仕方を自分で希望するようになるため、PCルームに入ってきて、あれこれと指示をする女の子もいるとのこと。

 PCに移ってきたばかりの原写真。ちゃんとしたスタジオできれいな照明で撮っているため、これだけでも普通の写真(昔は店長が店の中のどこかでポラロイドで撮っていました)よりは全然ましです。でも、元がひどいと、やっぱりひどい。「これじゃ、客は指名しないだろうなあ」と私も思います。さて、驚くのはここから、PC上で様々なマジックが広げられます。まさにイリュージョンの世界です。シミ、ソバカス、ホクロなんかは一発で消せます。皺も、ちょっと手間ですが消します。目をパッチリにすることもできます。緊張気味で青白い顔も血色よくできます。ボサボサの汚い肌も温泉上がりのようにツルツルに出来ます。鰓が張っているのも、ひっこめることができます。恐ろしいのは、「胸を大きく」したり、「ウエストを細く」したり、「足を長く」したりできること。体の形自体まで変形できるとはびっくりしました。色黒の子も真っ白にできます。(これはPCでなくても照明でなんとかなるんですが)  当然、顔のボカシも一発で簡単です。わりと難しい技術ですが、「豊胸手術の胸を人工的でないように見せること」も可能だそうです。
 とにかく、様々なマジックのあとにできあがってきた女の子の姿は完全に別人28号。写真を渡すと、ご本人は一瞬凍りついて、「これ、本当に私ですか?」と聞いてきます。そりゃそうです。全然違いますもん。私だって、写真の中の女の子と目の前にいる女の子が同一人物だと思えないくらいです。まさしく、マジック。写真というのは「真実を写す」と書きますが、これじゃ、「写偽」です。彼女、喜んでお店に帰っていきました。

 次に来たのは、どう見ても40歳を超えているオバサン。かなりケバイ顔です。「もしかして熟女ヘルスってやつ?」とカメラマンに聞いたら、「違うよ。ソープだよ。実年齢は45だけど、店では24歳ってことになってるよ」とのこと。愕然。この女性も、撮影〜PCマジックのあとには、あ〜ら不思議、20代は無理でも、30そこそこには見えるように変身しました。

 仕事が一段落して、コーヒーを飲みながら、「いや〜、フォトショップの威力はすごいねえ」とPC談義です。私は最初電話で「風俗嬢の写真を撮っている」と聞いた時に、「きれいな娘を毎日見れていいなあ」などと勝手に思っていたのですが、実際は、9割がたは「これでフウゾクやっていちゃだめだろう」という「ブス・デブ・貧乳・年寄り」だそうです。特にソープは高齢者が多いそうです。「正直言って、気持ち悪いよ」と彼は言ってました。「2ヶ月に1人くらい、たま〜に、きれいなコが来るんで、それが唯一の楽しみかなあ」とのこと。「そんなに確率低いの?」と私はびっくり。
 今、彼が悩んでいるのは、「被写体となるフウゾク嬢やお店にはすごく喜ばれる仕事なんだけど、そのお店のお客さんには恨まれてるだろうなあ。詐欺の片棒かついでるようなもんだからね。○チャンネルとか見ると、”どこそこの店は写真修正がすごすぎる”とか書いてあって、それが自分の担当の店なんかだと、複雑な気持ちだよ」ということ。たしかに詐欺かもしれない。完全に別人だもん。特に雲霧のように胸にこだわる客は、胸を大きく見せる修整は困ります。

 また、カメラマンならではの苦情も言ってました。「俺の撮った写真なんだから、うちのスタジオに著作権があるのに、フウゾク雑誌が勝手に転載していることがあるんだよ。一銭も払わないのに。無料の写真使って、雑誌売って儲けるなんてひどいよなあ」と。そうなんだよね、写真業界って一部の一流プロ以外、著作権ってないに等しいんだよね。困った業界だ。

 「自分が撮った写真がどう使われているか?」「他のプロはどういう写真を撮っているのか?」、研究するためにそこのスタジオでは風俗雑誌を毎号数冊購入しています。そこには、「35歳が22歳になっている」「ウエスト80センチが62センチになっている」「BカップがFカップになっている」「犬嫌いなはずなのに、犬を飼っていることになっている」・・・・・ 虚偽記載だらけです。「よくここまでウソ書くよなあ」と感心するそうです。


 フウゾク店からすると、写真のデジタル化というのは非常にありがたいことです。今まで1ポーズ1万円だったのが4〜5千円で済み、おまけにPCの修整つき。女の子はみんな美人になってしまいます。これは最高です。コストが安いから、写真の更新も頻繁にできます。ネットで宣伝する店が増えている現在、写真は重要です。店によっては「夏になると浴衣バージョン」「12月はサンタバージョン」などと、細かく写真を変えたりできます。写真を変えると、客側から見ると新鮮に思えて、リピーターが増えます。そんなわけで、写真業界としても、「単価は安いけど、仕事の機会は増えてありがたい」とのことです。

 本HPを見ている人たちも、フウゾクのお客になるかもしれませんが、くれぐれも写真を信用しないで下さい。それから、カメラマンを恨まないで下さい。あくまでも、先方の希望に沿って修整しているだけですから。写真ではなく、「イラスト」だと思ってください。

 ところで、私が以前から気になっていた、「韓国フウゾクの女の子って、なんであんなにお人形みたいにかわいいの?」という質問を彼に聞いてみました。「このスタジオには韓国人は来ないので詳しくは知らないけど、写真修整もすごいけど、人造人間を作るくらいのすごい整形や豊胸をやっているみたいだねえ。韓国じゃ水商売に限らず、”成人すると整形する”というのが当たり前みたいだよ。Boaだって、もともと美人なのに、いじってるもんね。チェジウの鼻だってすいぶん変わってるよ。でも、みんな同じような整形をするから個性がなくて、工場生産のお人形みたいに見えるんだよね。とにかく韓国フウゾクは気をつけたほうがいいよ。写真の子と別人が出てくることも多いらしいし」とのこと。「日本人も、整形・豊胸はもはや当たり前だね。手を加えてない整形バージンはほとんどいないんじゃないの? フーゾクも芸能界も」。う〜ん、恐ろしい社会になったもんだ。「天然乳こそ最高」の雲霧にはすみにくい日本になりました。

 彼いわく、「この仕事をしていて良かったことは、自分でフウゾクにいくことがなくなって、貯金が溜まるようになった」とのことです。汚い裏側を見てしまうと性欲も萎えるんでしょう。
 
 「でもね。この仕事もライバルが増えて、過当競争になってきたよ。女の子だけじゃなくて最近はホストも撮るようになってねえ。ホストって、暗いところでみるからカッコイイように見えるけど、実際はそこらへんにいるただのオニイチャンばかりだよ。ポイントは化粧と髪型かな。ホストの撮影の時は、ヘアメイクのスタッフがついてくるもんね。それに、照明もバック(背景)も女の子のときとは全然違うんだよ。黒っぽい背景で、トップライトが強いなあ。まあ髪の毛を強調する照明だね。スタイルはあんまり関係ないみたいで、全身を撮ることは少ないし。ホストの撮影も結構大変だよ。人気のあるホストはえばるしね。それに、俺、もともと男の写真は嫌いなんだよね。」

 「あとね。ここんとこ増えてきたのが、結婚紹介業者のプロフィール写真。駅ビルの中にあるでしょ? ○MM○って会社。あそこの仕事がよくあるのよ。お見合いも最初が肝心だから、修整しまくりだね。まあ、この技術が買われて仕事をもらってるんだけど。でもさ、結婚相談所に登録する人って、やっぱ、なんか変でしょ。30過ぎて、今まで一人もつきあったことがないとかさ。昨日なんか、40歳の男性が母親連れてスタジオに来たよ。”よろしくお願いします”って母親に頭下げられちゃったよ。”この子、顔が暗いんで明るく撮ってあげてくださいって”言われてもね。照明明るくすればいいもんじゃないし。俺もたまにはきれいな芸能人でも撮りたいなあ」


 どんな仕事でもいろいろ苦労があるようです。


※この業界では、「修正」という用語は使いません。「修整」といいます。「修正」だと、「間違っているものを直す」というイメージがありますが、「修整」だと、「手を加えて整える」という感じになり、意味合いが違います。

 


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